総合・探究は実験

3つの資質・能力

文科省が育成を目指すとしているのは、「実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能」「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力など」「学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性など」の3つの資質・能力です。

これを説明する際、最近の私は、どういうことができる子ども達を世に送り出したいかという形に変換して話すようにしています。授業で習い体得した知識や技能をフル活用して「考えるのが好きな子」「自分で決められる子」「伝えるのが好きな子」「質問したりされたり、話し合いが好きな子」「できるまでやりたい、わかるまで続けたい、あきらめない子」「なんで?ほんと?と確かめたい、鵜呑みにしない子」「私ならこうする、と主体性を持ち、私を主語に語れる子」という具合です。

実験好きな子

そして、上記のような子が育つには、学習の中に「実験」の要素を積極的に取り入れるのが良いだろう、という話を小学校の先生にはよくしています。理想をいえば、今やろうとしていることが正しいのかどうか、うまくいくのかどうかをみるには「実験してみるしかない」という状況が望ましいといえます。そうすると、ぶっつけ本番ではいけない、事前に実験の時間を確保する必要があるという「計画性」の意識の植え付けにも役立ちます。

また、インターネット等で調べて頭では理解したが、実際にやってみると書かれている通りにはならないといったことを体験すれば、「実験現場」の状況・条件の違いや、実験手順の細かな違いを見直してみることを通して、「丁寧に準備すること、進めることの大切さ」の認識にもつながるでしょう。

実験に必要な「予想」

実験において大切なことは、まず、結果を事前に予想することです。事前予想を組み入れることで、実験の意味は、より大きくなります。ただ、予想が「当てずっぽう」では面白くありません。どうしてそうなると思うかの理由を必ず確認します。先生がクラスでこの作業をリードする際には、全員が何かしら予想を持つよう配慮します。「声の大きな」児童にクラス全体が引きずられてしまわないようにするには、最初に、誰にも相談せずに個別に自身の意見をノート等に書き出してもらい、それから、何を書いたかを順に発話してもらうのもよいでしょう。それを聞きながら、先生が、異なる意見毎に黒板に書き出し、何種類かに分かれた意見とその理由をクラスに共有します。意見は同じでも理由が異なる場合にも注意しながら分類します。もし意見が一つにまとまってしまうようであれば、その時点で、再度、他に意見がないかどうかを確認してみてもよいでしょう。

試作品を作って、それでうまくいくかどうかを確認する「実験」の場合も同様です。「こうすればうまくいくはず」と予想し、その条件に合う試作品を作ったわけですから、その変更したところを文字にして残しておきます。例えば何cm小さくした、何g軽くした、のような具合です。また、形状のこの部分をこう変えたという場合は図解も付けて具体的に示します。そうすることで、後の「結果の評価」がより明確化します。

ところで、運動会のリレータイムを縮めるために、走順やバトンパスの位置を変えてみて試すことも「実験」に入ります。学校行事のあらゆることには、予行練習の際などに実験要素を加えられそうです。それを一つひとつ丁寧に行うことで、それらの行事も「探究」の域に加えることができるようになります。

実験結果の評価

実験の結果が出たら、それを、まずは素直な目で見つめ受け入れます。喜び過ぎず落ち込み過ぎず、です。予想に反してうまくいかなかった点については、予想の方向がそもそも間違っていたのか、方向は合っていたが改善の程度が充分でなかったのか、など原因追及にあたります。ここは、次の実験計画にも影響を与える部分です。誤魔化すことなく公平な気持ちで当たります。予想の方向は合っていたという場合には、例えば、小さくした程度が、まだ、あと数ミリ足りなかったというように具体的にわかるはずです。

一方で、結果を見つめる目を少し引いた位置において全体を眺めてみることも必要です。今回の実験の焦点とした大きさの問題は確かに重要だったが、あわせて、形状の工夫もすると更に良くなりそうだということが見えてくるような場合があるからです。せっかくなので、実験結果を、最善を目指す材料にしましょう。素直な目で見た後、今度は少し欲張った目で見つめてみるという感じです。また、よく観察しようとすると、実際には目に見えていないことまで見えてきたり察知できたりすることもあります。このあたりは児童だけで進めている場合はなかなか難しく、大人の声がけが必要となる部分かもしれません。

振り返りとまとめ

実験後には、振り返りをします。これは、実験をしてみてよかったかどうか、実験してみることの意味といった観点からの振り返りです。実験するとどんな良い点がありそうかということを考えてみることは、今後の実験活用の質にも影響します。

ちなみに、ChatGPTに「実験してみることのメリット」について聞いてみたところ、次のような回答がありました。

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実験を行うことのメリットは多岐にわたります。以下に主なポイントを挙げます。

  1. 実際の結果を確認できる: 実験を通じて仮説や理論が実際の環境でどう作用するかを確認できます。これにより、理論と実践のギャップを理解し、実用的な知識を得ることができます。
  2. 新しい知見の発見: 実験を行うことで、予想外の結果や新しい現象を発見することがあります。これは、新しい理論の構築や、既存の理論の改訂につながることがあります。
  3. 問題解決能力の向上: 実験では問題が発生することがよくあります。これに対処することで、創造的な問題解決能力や論理的思考が養われます。
  4. エビデンスに基づく意思決定: 実験の結果を基に、データや証拠に基づいた意思決定が可能になります。これは、科学的根拠に基づいた信頼性の高い結論を導くのに役立ちます。
  5. スキルの向上: 実験を繰り返し行うことで、実験計画の立案、データ収集、分析、報告などのスキルが向上します。これらは研究や開発の場で非常に重要です。
  6. 仮説の検証: 実験は仮説を検証するための強力な手段です。仮説が正しいかどうかを確認し、さらに深い理解を得ることができます。
  7. 安全性の確認: 特に化学や工学の分野では、実験を通じて製品やプロセスの安全性を確認することが重要です。これにより、リスクを最小限に抑えることができます。
  8. 実践的な学び: 教室や理論の中だけではなく、実験を通じて得られる知識は、より実践的で現実世界に応用しやすいものになります。これにより、理論がより深く理解でき、実生活での応用が容易になります。

実験は、単なる知識の確認だけでなく、新しいアイデアを生み出し、既存の理解を深めるための重要な手段です。

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10歳からわかる「まとめ」

・文科省が目指す3つの資質・能力を持った子が育つには、学習の中に「実験」の要素を積極的に取り入れるのが良いだろう

・実験の前には、「理由を明確にした上で結果を予想する」過程を組み込みたい

・学校行事にも予行練習の際などに実験要素を加えられる。改善につなげるその作業は「探究」と呼べる

・実験結果は素直な目で見つめ、うまくいかなかった原因を見極め、改善につなげよう

・結果を見つめる目を少し引いた位置において全体を眺めてみることも必要。結果を更に良くする別の改善策が見えてくる場合もある

・実験後には、実験の意味という観点からの振り返りも必要。それを、今後の実験活用の質の向上にもつなげよう

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