最近のニュースから

インバウンド旅行者数

2024年7月の推計値が先週発表されました。JINTO(日本政府観光局)によると、7月の訪日外客数は3,292,500人で、6月の3,135,600人とあわせ、2ヶ月連続で単月での過去最高記録を更新しています。同時に、7月までの累計が21,069,900人となり、過去最速で2000万人を突破しました。年間で4000万人近くの外国人が日本を訪れるとなれば、日本の人口の約3分の1にあたります。

世界で外国人観光客の訪問が最も多い国はフランスです。パンデミック中に一時スペインにその座を譲ったことがあるものの、返り咲いたばかりか、国連世界観光機関(UNツーリズム)によると、昨2023年には訪問客数が1億人に達しています。フランスの人口のおよそ1.5倍にもあたる数です。今年はパリでオリンピックとパラリンピックが開催。外国からの観光客はさらに増えるのでしょうか。期間中はフランス国内各地からのパリ訪問が相当数あるとされていましたから、宿泊場所不足などで、外国人の訪問にはもしかしたらマイナスの影響があったかもしれません。あるいは、オリ・パラ前後の反動のようなものがあるでしょうか。今年の数字が最終的にどのようになるのか、気になるところです。

コンビニに関するアップデート

さて、日本を訪れる外国人に人気の場所の一つに、全国各地に点在するコンビニエンスストアがあるという話をよく耳にします。とりわけ、取り扱いの各種食品の美味しさと小さな店舗内とは思えないバラエティの豊富さに惹かれている様子がうかがえます。

前項で訪日外客数に関する数字をいくつか挙げています。ここでも、コンビニの数に触れておきましょう。全国のコンビニ数はおよそ57,000店で、セブン・イレブン、ファミリーマート、ローソンのトップ3で合計52,000店ほどです。出店数の伸びは近年止まっかのような印象があります。店舗数の変動が小さくなったのであれば、一定人口あたりの数を計算し、それを記憶しておくと、しばらくの間は役に立つかもしれません。店舗数を日本の人口で割ると、現状、人口1万人あたりに対して4ないし5店舗のコンビニが日本にはあるという計算になります。

人気のコンビニ・アイス

真夏のこの季節、コンビニで取り扱われているアイスクリームが特に人気ということで、先日もテレビで紹介されていました。スポットライトを浴びていたのは、オハヨー乳業のブリュレ(BRULEE)という名の商品です。1996年に同様の商品を発売した時の名前は「焼きアイス」だったという通り、アイスの表面に塗ったカラメルを焼いています。実際の商品をまだ目にしたことのない人の中にも、名前からクレーム・ブリュレというデザートを連想し、どんなアイスかイメージできた人がいるかもしれません。ちなみに、ブリュレは「焦がした」という意味のフランス語です。

表面のカリッとした食感と、クリームの柔らかい食感の対比が特徴ですが、これをアイスクリームで実現するというところに開発の苦労があったと紹介されていました。素人考えでは、表面を焦がしてどうしてアイスが溶けないのかが疑問に浮かびます。初期の「焼きアイス」では、焼きには成功したものの、食べている途中で表面のカラメルもだんだん溶けてくるというのが問題だったそうです。その結果、数年でその商品は売り場から一旦撤退となりました。

しかし、会社はその後も商品の改良を続けます。会社公式サイトの商品紹介ページに幾つもの特許番号が掲載されており、独自技術の開発で問題をクリアしていったことがわかります。当然、テレビの工場撮影は「ここから先はNG」で具体的な工程を見ることはできませんでしたが、成功までに20年を要したという試行錯誤の歴史の存在は、何より印象に残りました。

【参照】 ブリュレ/オハヨー乳業

アイス販売拡大の背景

最近は見慣れてしまいましたが、アイスクリームがコンビニでよく売れるようになったきっかけには、「蓋なし冷凍陳列ケース」の登場がありました。冷気によるエアカーテンを作り出すことで、それまで、購入の都度行っていた「蓋の開け閉め」が必要なくなりました。大勢の人が同時にケースを覗き込めるようになり、四方から手を伸ばして商品を手にできるため、購入のしやすさ・手軽さが格段に上がったといわれています。

最近は、中が見やすく商品の取り出しも容易な蓋がついた冷凍陳列ケースも目にするようになりました。蓋付きの方が使用電力は少なくて済むようです。昨今の猛暑により、エネルギー需要のことを無視できなくなってきたということでしょうか。

そろばんの玉

夏休み中に目にしたニュースの中では、他に、兵庫県小野市の伝統産業「播州そろばん」の生産を残すため、隣接する三木市の金物技術者が一肌脱いだという話も印象に残っています。そろばんの玉を木からくり抜く際に軸を通す穴あけを玉に同時に行いますが、これまでは半分の厚みまで進んだところで木をひっくり返し、裏面からもあける必要があったとのこと。寸分違わず位置を合わせるのは熟練者にしかできないというのが問題で、産業を残すには木の片面から一度だけ刃を通して切り抜けるようにし、それほどの熟練者でなくても作業できるようにすることが課題解決への近道でした。協力を申し出た金物技術の会社は、2年にわたる試行錯誤の末に、なんとかそれに成功したそうです。木屑が詰まってしまったり金属の刃が焼けてしまったりしたのを、わずかな刃の角度の差で何度も試し成功に近づけていったそうです。

【参照】 小野の「播州そろばん」に三木の「金物」の技術を生かす

探究は年単位

これらのニュースを目にし、製品開発にしても技術の開発にしても、実現には何年、何十年もの「探究」の積み重ねがあるものだということを改めて思い起こしました。また、陳列ケースの例からは、状況の変化を取り入れる変更を英断する必要が出現することもわかります。学校の探究にも、学年を跨いで続くようなもの、また、一度出来上がったものを後輩が再度見直すようなもの等があっても、決しておかしくはないはずです。

10歳からわかる「まとめ」

・企業が新製品や新技術の開発成功まで、「探究」に数年をかけるのは通常のこと

・一旦「完成」したものも、その後の状況の変化でさらに改善を加えたり、時には以前の形に戻ったりすることもある

・学校の探究にも、学年を跨いで続くようなもの、また、一度出来上がったものを後輩が再度見直すようなもの等があっても、決しておかしくはない

第77回「総合・探究はアウトプット」を読む