情報「を集める」と「が集まる」の違い
戦略立案にあたっては、学生のプロジェクトであろうが企業のそれであろうが、大抵まずは必要な情報を収集・整理しようとするところから始まります。学生の場合はその作業を外部委託することなど発想すらしないでしょうが、企業の場合はよくあります。ただし、理由は異なっていそうです。あるところは、資料収集は手間がかかるが結果は誰が行なってもそう変わらないだろうという、いわば「軽視」から、作業を外部に丸投げしたり内部にアルバイトを雇ったりして行なっています。別のところではこれとは逆の考えや期待から、むしろ「他人の視点を尊重」するが故に、積極的に外部専門家に依頼しています。企業人の場合、当該のプロジェクトは初めてでも似たようなプロジェクトは過去に何度も経験があるということもあるでしょう。そのような場合、慣れから、情報収集に限らず一つひとつの作業がおざなりになりがちです。それを避けるために、プロジェクトのスタートで「目先を変える」意味合いで、外部活用が検討項目として俎上に上がるわけです。
自身で情報を集めるのではなく、他人に任せて集まった情報を使うことにすると、視点が変化します。集まってくる情報そのものにも新規性が現れます。自身の感覚では「関係なさそうだ」と判断され途中で排除されたものや、そもそも見つけられなかったものが、他人が提示するものの中に含まれるからです。集める人によって集まるものは変わります。
情報の見え方の違い
情報は「情(なさ)けへの報(しら)せ」で、その人の感情に訴えてくるもののことを指すと教わりました。同じ素材からであっても、そこから抽出する要点や示唆は人によって異なります。それ以前に、それが情報であるかどうかも、そのうちの何が情報であるかも、判断は受け取り手によって異なってきます。解釈が人によってそれぞれ異なるということでしょう。ものに光を当てる場合、どの方向から、どの角度で、どの高さから、どのくらいの強さで光を当てるかによって影の形も濃さも変わってきます。情報の解釈は、それに似たところがあります。ぼんやりした光を当てたのでは、影もぼんやりしてしまうのです。情報を受け取る際、その人の視点によって見え方が違っています。見えるものが違えば咀嚼の仕方も咀嚼の度合いも変わってきます。情報の解釈が、情報の価値に大きく影響します。
チームで戦略を統一しようとする場合には、検討する情報の解釈が全員揃っているかどうかをまずは確認しなければなりません。必要に応じて、情報の解釈を合わせるための議論を充分に行います。「ソラ・アメ・カサ」です。空を見上げて雨が降りそうかどうかを判断し、雨の程度を予想します。小雨だと思えば傘をさしながら予定通り進んで問題ないかもしれませんが、暴風雨だと思えば計画変更の可能性も生じます。解釈が揃っていないと、雨対策の準備がチームメンバー同士バラバラになってしまいます。
情報公開の仕様が示す情報
最近は情報公開に積極的な企業が増えてきました。非上場企業は、本来、情報公開が義務付けられているわけではありませんが、オウンドメディアとしてのインターネットの使用が一般化し、わざわざ印刷しなくてもWeb上に載せておくだけなら簡単で費用もさほどかからないと考えるからなのか、広告・宣伝を含んだ企業の主張や姿勢のアピールは、特によく見かけるようになりました。勢い、それを裏付けるファクトに触れることにも繋がっており、丁寧に読み込めば、相当の情報を引き出すことが可能となってきています。
また、複数あるオウンドメディアのうちどれを選んで活用しているか、どのように情報を公開しているかに、その企業の考えが表れます。Webサイトの作り自体が15年以上も更新されていない企業もあれば、半年に一回更新するような企業もあります。DXが叫ばれる昨今ですが、その一歩も二歩も手前のデジタル化が進んでいない様子が見え隠れする場合すらあります。Webサイトは綺麗にわかりやすい作りになっていても、申し込みに際しての手続きが、書類をダウンロードしそれに手書きで書き込んで郵送するような仕組みになっていると、「なぜだろう」という疑問が湧いてきます。当該企業というより、業界全体の慣習の影響でしょうか。活用されている情報媒体の種類と、その活用のされ方からも、色々と見えてくることがあります。
分析
分析は分けるところから始まります。グルーピングです。グルーピングができれば、比較が可能となります。比較しながら見つめると意味がより明確になります。比較の対象の一方について実情や背景が詳しくわかっているなら、それを元にもう一方の未知の対象について正確に読み解くことが比較的容易になります。数字の重みや意味するところについて、より現実的かつ具体的な想像が可能となるからです。一つは、実際に取引のある企業の事業経費報告書で、もう一つが今後新規開拓したいと狙っている企業のそれだとすると、両者の事業内容や規模を考慮した上で、ある項目の経費はおそらくこのような内容のことに使われているのだろうという予想がつくようになります。営業での攻め所が明確になりやすいのです。
まとめ
まとめは、相手の現在の弱点(要強化ポイント)にこちらの強みをマッチングするつもりで整理してみるとうまくいきます。また、まとめから提案に繋げることも容易になります。そのためには、予め自社の強みをできるだけ細かく分解しておくと便利です。先方とこちらがWin-Winとなる相性の良さがどれほど強いか、どれほど数が多いか、を示すことが提案成功の鍵となります。そのために、自身(自社)についての内部分析のアップデートを常に忘れず、定期的に行うようにします。
情報の整理・分析・まとめを行う際は、これが良いアイデアを生み出すための作業工程だという意識で取り組みましょう。
10歳からわかる「まとめ」
・情報を集めるにあたっては、集める人によって集まるものが変わることを意識し、その利点を上手に活用する
・情報を集めた際には、その情報が、どこでどのように公開されていたかにも注意を払う。情報公開の仕様から読み取れることがある
・分析は比較を意識して行う
・まとめは、先方とこちらのWin-Winの相性の良さを示し、提案で締め括る
ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。