
子どもへの外からの刺激
3月は年度末だからでしょうか。探究に関しても、様々な学校行事が対面・オンラインを問わず実施されています。3月8日(土)には、あの新渡戸稲造氏が創設した新渡戸文化中学校がHappiness Bridgeいうイベントを開催しました。今回、数回目だそうです。私は、それをたまたま事前にPeatixで発見し、全くはじめてで様子も何もわからないまま、思い切って参加申込みをしていました。学校から伸ばしたBridgeを架ける先は、一般の社会ということでしょう。この新渡戸文化中学校では、教科横断型学習の「クロスカリキュラム」という探究型授業を、毎週水曜日に丸一日をかけて実施しているそうです。そのクロスカリキュラムの年間計画の中で「100人の大人とつながる」ことをコンセプトとして掲げ、目指して活動しています。
集中と、思い付いたら即の環境
ここでも何度も書いている通り、東京都渋谷区の小中学校は、午後の時間を全て探究の時間に当てているそうですが、新渡戸は週の一日、朝から晩まで探究の時間という日があるわけです。いずれにせよ、探究活動においては、あまり間を置かずに連続・集中して取り組むことで実感できるメリットや充実感が大きいものです。
1週間に一度という頻度で、時間もいわゆる一コマでは、先週のことを思い出してやっと乗ってきたというところで「はい。今週はここまで」ということもあるに違いありません。そういう意味では、思いついた時にいつでも、家でも放課後でもどこでも、ちょっと取り掛かれるような仕組みや小部屋のような場所があると、よいのかもしれません。
私のBridge初体験は
まず印象に残ったのは、どのチームも、不測の事態に対する臨機応変の対応が素晴らしかったことです。オンラインで外と繋ぐ形式での開催です。子ども達も全員が学校に集まっているとは限らないようでした。何人かで発表するうちの一人が自宅からの接続で、うまく入れない場面がありました。その際に、発表順を入れ替え滞りなく進行させたリーダーは素晴らしいと感じました。中学生の場合は、「少し待ちましょう」となり、その間を大人が繋ぐという経験を何度かしてきた私には、それはとても新鮮な光景でした。一つの部屋には、発表者以外にもおよそ3人から4人は、視聴者・意見者・質問者として、誰か生徒が参加するのが通常のパターンのようでしたが、どこか別のところに生徒が寄り過ぎてしまったのか、来るはずの生徒が来なかったのか、私とある発表者の二人だけでずっと話をすることになってしまった回がありました。しかし、その男子生徒は物怖じ一つせず、堂々と私の質問に答えていました。質問者と回答者という感じではなく、雑談のような感じでやり取りを進めていけたのは、これもやはり生徒の対応力の確かさのおかげだったと感じます。聞かれたことに答える方が実は簡単です。それに対して雑談は相槌を打ったり、気の利いたコメントをしたり、その場で思い付いたことを話の流れに合うように加工して使ったりと、結構な「大人の対応」が求められるものです。これも非常にスムーズに出来ていたことが、新渡戸の生徒の特徴でした。「人間力」が高いのだなぁと感じさせらました。
積極性で「得」をする
ある女子生徒の発表は心理学に関するものでした。一生懸命に探究しようとしている様子が見えたので、つい、「私がやっているリサーチの分野での心理学の応用例を1-2分ほどで紹介しましょうか」と提案してみました。話をした後も更に興味を持った彼女は、先生と私が連絡を取り合うようにし、自身の都合が付く日に、私と再度オンラインで繋がり、もう少し詳しく話を聞き出すことに成功しています。
生徒がそこまで真剣であれば、こちらは、何かヒントになることを掴んでほしいと願い、ただ喜んで手助けしますから、色々と話しかけてみました。こちらの都合が限られた日程だったため、生徒にも不便を感じさせたと思いますが、お互い充実した1時間を過ごすことができたと思います。
そのやり取りを楽しく感じさせたのも、やはり、明るく素直な受け答えであったと感じます。新渡戸の生徒は男子も女子も共通して、ひとの話を聞くのが上手です。質問の入れ方が上手です。その前に、好奇心が旺盛です。なので、いわゆるアクティブリスニングが得意に育つのだろうと感じました。
あるいは、このような社会と繋がる「Happiness Bridge」のような事業を積極的に実施する中で徐々に上記のような力が付いてきたのでしょうか。おそらく両者がうまく噛み合いながら進んできているのだろうと思います。
IBLで得た、また別の刺激
3/22と23の土日は、また別種の強い刺激を受けることができた二日間でした。立命館大学プロジェクト研究員・蒲生諒太氏による、科学研究費助成事業「高校全国調査を踏まえた『探究的な学習』支援プログラム」プロジェクト報告会を、初日の土曜は立命館大学東京キャンパスを直接訪問し、翌・日曜は、大阪で披露されたその続きをオンラインで視聴しました。初日と二日目の間の夜間に、蒲生氏は東京から大阪まで移動しています。かなりハードな建て付けでできた報告会だったと感じます。
蒲生氏の主張をまとめると、「地に足の付いた探究をしましょう」とのことに集約されます。それを様々なデータから検証していく氏の姿勢は、まさに圧巻でした。このように厳しく鍛えられれば、生徒はやっていて楽しいに違いなく、かつまた、本人も知らず知らずのうちに、生きていくのに必要となる、真に求められる力を身に付けて行っていることだろうと強く感じました。
この活動に、決して、色斑を出してはならないと感じました。探究に関わる大人全ての一人ひとりが求められる域に達し、それの研鑽・アップデートを続けながら、子供達と引き続きずっと接し続けなくてはならないのだ、と決意しました。
10歳からわかる「まとめ」
・子どもと社会との繋がりは大切。最初は大人が積極的に準備して動かし始めるものかもしれないが、もうすでにそこから手離れし、しっかりと生徒だけでも運営できそうなほど学校カリキュラムの中に定着している活動がある
・IBLの活動は一見地味だが、非常に有意義な活動。これまでの10年間の半ばお祭り的な盛り上がりは過ぎた。これからは、探究を、しっかりと地に足の付いた活動に変えていく必要がある
・それには、関係者それぞれが真剣に意見を戦わせることの出来る場が必要で、そこに、それぞれの意見の根拠となる最新のエビデンスを皆が持ち寄ってこなくてはならない

ジャートム株式会社 代表取締役
学校・企業・自治体、あらゆる人と組織の探究実践をサポート。
Inquiring Mind Saves the Planet. 探究心が地球を救う。