Oh, yes! の相槌で繋ぐ探究対話

「孫」たちと過ごした週末

1996年9月、我が家はホストファミリーになりました。早稲田大学国際部に、秋学期から翌年の夏休み前までの10ヶ月間の予定で留学してきた大学生を家に迎えたのです。その後これまで、同様の長期留学生と3ヶ月の短期留学生を合わせて合計8人、間を空けながら受け入れてきています。最初の連続四人が全て長期留学生で、彼ら、いわば我が家の長男から四男まではもう皆40歳代も後半に入る年齢です。四男は日本人女性と結婚して愛知県に住んでいるため会う気になればいつでも会えるのですが、コロナ禍下で生まれた「孫娘」には、まだ会えていません。三男は、その後、日本に戻ってきた様子はありません。しかし、長男と次男はそれぞれ家族を連れて、アメリカとカナダから日本に帰って来てくれたことがあります。

そして、コロナ禍直前に娘との二人旅で日本にやって来た長男が、今度は彼の5人家族全員と、友人の5人家族も連れて合計10人で、まさに今、日本を満喫中です。

ガールズの魔法の言葉

12歳から15歳という、実の娘の半分以下の年齢のガールズばかり6人を目の前にして、出迎えた羽田空港で一瞬たじろいだ私ですが、すぐに彼女達とも打ち解けることができました。それは全て彼らのおかげです。機内での寝不足や時差ボケもあるだろうに、対応が見事なまでにポジティブなのです。10人のうち初来日者が8人というグループです。見慣れないものも数多くあります。特に好奇心の強い子ども達からは、何か見つける度に説明を求められるものの、ふいをつかれると私もなかなか英語が出てきません。しかし、一つわかると、彼女達は満面の笑顔で ”Oh, yes!” と言葉を引き取ってくれます。この共感の相槌がまさにマジックで、これを合図に次々と私の口を衝いて言葉が出てくるようになるのです。言葉は相手によって引き出されるものだということ、聞き上手の存在の大きさを改めて実感しました。

確認のための質問

彼女達が、決して、し忘れることがないのが、確認(のための質問)です。もちろん、話に真剣に耳を傾けてくれているからですが、彼女達の頭には次々に質問が浮かんでくるようです。それは常に自然な質問で、聞かれる側が「きっと次はこれを聞いてくるぞ」と予想がつくようなこともしばしばです。話す側と聞く側があたかも同じ(川の)流れに身を任せながら進んでいるために、「それはあれのことだよね?」「次はこうなるんでしょ?」という、質問というか、これも相槌と呼んでもいい言葉が、会話の中に次々と挟み込まれてきます。これがまた気持ちがよく、全く会話の邪魔にならないのです。むしろ、潤滑油です。あの位の年齢の子どもであれば、「知っている、知っている。昨日見た、見た。それでさぁ、あの人がさぁ」というように自我をかなり強く出し、勝手に自分で話を進めて時に話し手の邪魔をしてしまうことすらあるものです。しかし、彼女達からそれを感じることは、ついぞ一度もありませんでした。聞き上手というか、乗せ上手です。

確認に使われる、5W1H

彼女達の確認には特徴があります。きちんと疑問詞を頭に浮かべながら、それを質問する形で確認をしてきます。主な英語の疑問詞をまとめて5W1Hといいますが、日本の学校ではこれを中学2年生の英語で習うそうです。しかし、この疑問詞に沿って、いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どのように、の各要素を押さえることは、日本語での発表を考える際にも当然有効であるため、壁新聞づくりやポスター発表が始まる小学校の高学年になると、子ども達は、この概念について授業で教わります。まさに「探究」「総合」と密接に結びついています。彼女達によると、アメリカでは小学校でこれを習うそうです。普段、私はこれを無意識に使っていますが、「ごぉだぶりゅういちえいち」のように読むのは、数字は日本語読み、アルファベットは英語読みですから、なんだか奇妙な感じです。アメリカでは当然、Five W One H です。

以前、フランス系の企業に勤務していた際、日本のオフィスで働くフランス人に尋ねてみたのですが、日本語が上手な彼にもこの言葉自体が通じませんでした。当時は、あまり深く気に留めず追求もしなかったのですが、今回、改めて、今でも親しくしているフランス人にメールで尋ねてみました。そうしたところ、もう70歳代の彼は、自分はこのようなコンセプトを学校で習ったことはないと断言しました。実はフランス語の疑問詞は、英語のように、多くがWから始まるという具合にはまとまっていません。WhoはQui 、WhenはQuand、WhereはOù、WhatはQuoi / Que 、WhyはPourquoi 、HowはCommentという具合で、O/P/Q/Cの4文字が必要になるのです。したがって、無理にやろうとすると3Q+1OPCとするのが精一杯という具合です。

また、同様に仲良くしている香港人の40歳代女性にも聞いてみたところ、彼女は中国語にもこのようなコンセプトを端的に表す言葉はないと教えてくれました。

5W1Hは魔法のフレームワーク

5W1Hは話を整理するのに役立つフレームワークです。聞き手がこれを元に相手の話を整理すれば、自身の理解が促進されます。また、そこまでの話でまだ触れられていないパートについて、それに関連する疑問詞を、相槌を入れるが如く問い掛けるのは「聞き上手・乗せ上手」への第一歩です。おそらく、話し手の考える「どの疑問詞のところを次に話そうか」と、聞き手が期待する「次に何を聞きたいか」がぴったりと合致し、それを聞き手が話の流れや展開を壊さずに良いタイミングで聞いてくれると、話し手の調子はますます上がっていきます。それが、結果的に、話し手の準備の不足を指摘することに繋がったとしても、話し手は素直にそれを認めることが出来ると思います。話しながらどんどん頭が整理され、不足に気づきつつも、一方で新しいアイデアの種もその場で生まれ出てくる、そんなことに役立つのが、5W1Hを元に紡ぎ出す確認の数々といえます。

私は、子ども達同士で是非、この5W1Hのフレームワークを使い倒してもらえるようになって欲しいと願っています。探究対話というと、先生は、子どもの相手を誰か大人にしてもらいたいと思ってしまいがちですが、子ども達同士でも充分出来ると私は感じています。探究対話で明らかにすべきは、自分たちは「まだ何が出来ていないか」「まだ何がわかっていないか」です。わかっていないことが何かがわかれば、それから答えを探しに行けばいいのです。その場で、大人から答えももらってしまおうというズルい考えは、”Oh, no!” です。

10歳からわかる「まとめ」

・聞き上手(乗せ上手)は、満面の笑顔で共感を示しながら、話をどんどんと引き出す

・まさに自身がそれを話したいと思った時に「確認の質問」が出てくると「待っていました」とばかりに話し手は調子付いていく

・良い確認質問を思い付く鍵は、5W1Hに沿って整理を進めること。それをしながら相手の話を聞き、話の流れの邪魔をせずに、良いタイミングで知りたいことを尋ねるようにする