福井県坂井市

先生との交流

本年度と来年度、私は福井県坂井市より「探究学習アドバイザー」の委嘱を受けています。昨日、委嘱式の後、早速、教育委員会主催のイベントで、坂井市の小中学校の先生たちと交流する機会をいただきました。冒頭30分でこちらの話を聞いてもらった後、残り3分の2の時間は現場の現状についてグループに分かれて話をしてもらいつつ、それを聞きながら、私は現場感覚と自分の話とのズレを確認していました。

話の中心は過去のこの連載に書いたことばかりで、主に今回は、第57回に沿った内容としました。

【参照】 第57回「小中学校での探究学習」

自分と付き合うのは大人も同じ

自分とのうまい付き合い方を見つけるのに有効に役立ててもらいたい「小中学校での総合」と「高等学校での総探」の活動・学習です。自分をよく知るための過程で行うことには個人個人にわかれてのじっくりとした取り組みも含まれます。その際、先生一人に対しクラスの児童・生徒30-40人という割合では、教師の目が全員にくまなく届くことは当然難しくなります。かといって、探究は内容というよりはアプローチですから、授業形式で全て教えられるものでもありません。教師の役割は、今後、よりファシリテーターのようなことにシフトせざるを得ません。先生たちには、地域の皆さんからの協力をさらにうまく得ながら、先生にだけ負担がいってしまうようなやり方を少しでも良い方向に変化させてもらいたいと願っています。その手伝いをするのが自分の最も大切な役割だとも考えています。と同時に、教師やサポートする大人の側も、変化を求められる自身との新しい付き合いに慣れていかなくてはなりません。これは、忘れずに常に意識しておきたい点です。

市を上げての取り組み

教育長から委嘱状を授与される委嘱式の前に、昨日は、市長とも面談する機会をいただきました。坂井市は様々な施策を通して魅力発信に努めていますが、子育てには特に力を入れている自治体として有名です。

【参照】 mamasta セレクト「福井県坂井市 のびのび子育てができる環境とは」

子どもが活き活きとしているまちは、大人も皆、活き活きとしています。皆が、健やかに、心豊かに暮らすまちの人々には、子どもたちの学力を「使えるもの」にアップデートする点で、是非活躍してもらいたいと思います。

発表の場の提供

先生から上がった意見の中に、子どもたちの探究の成果を発表する場を様々に設けることが大切という声がありました。確かにその通りで、子どもたちが行なっていることを多くの市民の目に触れるようにすることが、まちの大人たちの関心を高める最も実効性の高い方法です。例えば、ショッピングセンター内の「交流スペース」を使った発表会や展示会などが実施可能なら、保護者以外の大人が「買い物ついで」にたまたま目にすることも出てくるはずです。このような偶然の機会を演出する方法を、関係者で「探究」してみるのは面白いと思います。

限られた時間の中で

先生からの質問は、限られた時間の中でいかに有意義な探究活動を進めていけるかというところに中心がありました。探究の時間をなかなか取れないのは、実施しなくてはいけない学校行事などが数多くあることも影響しているでしょう。であれば、それらの行事に「探究的視点」を加えることを試みてはどうでしょうか。例えば、運動会で学級対抗リレーがあるなら、そのリレーで勝つために、どのような順序でメンバーを並べるか、バトンパスのタイミングをどこに定めるか、といった点などを「探究」しながら取り組みます。合唱コンクールにしても、全員が集まって歌う練習をするほかに、個人でできるトレーニングを考え一人ひとりの発声・声量を高めるような努力を積み重ねることが有効だと思うなら、そのメニューを考え出して実行すればよいのです。何か行事があるたびに、「これに関して探究や実験ができることは何かないかなぁ」と問いかけてみることを癖にしてみましょう。

興味・関心について話す時間

小中学校の総合の時間を使ってやっておきたいのは、自身の興味・関心がどこにあるかを突き詰めることです。1年に何回か発表の機会を作り、その時点で何か見つかっている児童・生徒にはそれについて話をしてもらいます。クラスメートは話を聞いて様々な質問をしながら、発表する子から説明や気持ちを上手に引き出す手伝いをします。良い質問があると、それによって発表者の頭の中が整理されますから発表者も楽しくなってきます。質問を受ける度胸も徐々についてくるはずです。興味・関心がまだ見つかっていない子どもは無理に発表しなくて構いません。その代わり、友達への助け舟になる良い質問を練り上げることで貢献します。その思いついた質問を自分にも投げかけてみると、自身の興味・関心について考える際のヒントにもなります。それに気づけば、自分が発表できる日も近づいてきます。

10歳からわかる「まとめ」

・子ども達が探究の成果を発表する機会を様々に持つことは、地域の人々との触れ合いを増し、人々の地域教育への理解を促進できる点で有効

・学校行事が多く、探究の時間をなかなか確保できないなら、その学校行事に「探究的視点」を加えて、行事の質を高めるようなことを試みてはどうか

・小中学校の総合は、自身の興味・関心を突き詰めることが目標。したがって、児童・生徒が興味・関心について話す機会を数多く設けたい

・その時点で話せることがない子どもは無理に話す必要はない。その代わり、発表者の頭の整理を手伝うような「助け舟質問」を投げかけることで貢献してもらう

・他人への良い質問は、自分の興味・関心について考えを深める際に必ず役に立つ

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